現在世界は、気候変動や格差拡大による社会の不安定化など、かつてない深刻な課題に直面しています。これに対し、国連はじめ多くの国際的組織が産業界に提言を発信し各国の規制が強化されるなど、課題解決に向けてまさに世界が動いていることを肌で感じています。私ども企業も、社会の一員としてこの責任を果たすべく、歩調を合わせ、それぞれの分野で新たな技術や商品の開発を推進していかなければなりません。
 約75年の長きにわたり、顧客企業の最先端の商品開発や製造を支援する半導体製造装置と精密測定機器によって成長してきた東京精密グループもまた、ステークホルダーの皆さまと共に、持続可能な社会、そして会社の成長を実現していきたいと考えています。

東京精密グループのサステナビリティ

 東京精密グループが将来にわたって世の中に必要な企業として存在し、事業を成長させるためには、環境に負荷をかけない商品や、人々のウェルビーイングを実現する商品を市場に送り出す事業活動が重要であると考えています。また同時に、東京精密グループのステークホルダーが健全で豊かであるよう配慮することも、極めて重要であると認識しており、これが当社のサステナビリティ活動の基本的な考え方です。
 2021年、当社はサステナビリティ基本方針を策定するとともにサステナビリティ委員会を設置し、私が委員長として、陣頭指揮をとる体制を構築しました。
 サステナビリティ基本方針は、「環境問題への取り組み」「社会からの信頼の確立」「人権の尊重」「人財育成」「地域社会への参画と貢献」ならびに「公平、透明で効率的なガバナンス体制の構築と運営」からなり、これを基にマテリアリティを策定しました。

 「環境問題への取り組み」では、環境配慮製品の提供による環境貢献と製造拠点からのGHG排出量削減に取り組みます。
 「社会からの信頼の確立」「人権の尊重」「人財育成」「地域社会への参画と貢献」は、高付加価値製品の提供やサプライチェーンの構築を通じた社会課題の解決と、多様な人々が活躍できると同時に、心身共に健康で働きがいのある職場づくりへの取り組み、人権の尊重についてマテリアリティに基づく「優先的な取り組み」に沿って活動を始めています。
 「公平、透明で効率的なガバナンス体制の構築と運営」では、企業活動を支える経営基盤、コンプライアンス、リスクマネジメントの強化を進めていきます。また、取締役会議長として、取締役会の実効性を高める取り組みを進めています。

気候変動への取り組み

 気候変動は、当社にとっても重大な経営リスクであると考えています。地球温暖化による激甚化災害の増加が社会経済に及ぼす影響が大きいと思われるほか、脱炭素に向けた各種規制の強化によるコスト上昇、当社対象市場の変化による、対象市場減少など、さまざまなリスクを想定しています。一方で、当社が創り上げる商品やサービスが、例えばNEVの普及に貢献するなど、脱炭素社会の実現に向けた大きな成長機会になるとも考えています。
 従って、当社は気候変動対応を優先度の高い課題と位置付け、部門を横断した体制を構築し取り組んでいます。2022年にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、この枠組みに基づいたリスク・機会の分析と開示を行っています。
 また、当社自身も、2030年のScope1, 2のCO₂排出量を2018年度比で50%削減する目標を掲げ、温室効果ガスの排出量削減を進めるべく、主たる排出となる購買電力換算分のCO₂の削減を最大の目的とする省電力に重点を置いた活動に取り組んでいます。

グローバルカンパニーとして

 現在、東京精密グループの売上高の過半を海外市場が占めており、18か国・地域、約950名の従業員が国外で活躍しています。どの国と地域で事業を展開していても、東京精密グループとして一体感を持ったグローバルカンパニーでありたいと考え、国や地域による習慣や考え方の違いを尊重し、従業員同士のつながりを強化する取り組みを進めています。
 同様に、どの国と地域でも、事業を展開している拠点に対して、グループとして規律ある経営を推進することが極めて重要であると考え、グローバルマネジメントの強化を図っています。

計測で未来を測り、半導体で未来を創る

 東京精密グループは、ミッション「世界中の優れた技術・知恵・情報を融合して世界No. 1の商品を創り出し、皆様と共に大きく成長していく」のもと、当社らしいサステナビリティ活動を実行していきます。そしてパーパス「計測で未来を測り、半導体で未来を創る」の実践を通じて、人々の生活においてあらゆるものが便利に進化する豊かな社会、自然の豊かさや多様な幸せを享受できる持続可能な社会の実現を目指します。
 東京精密グループの目指す方向をご理解いただき、ステークホルダーの皆さまと共に成長したいと願って、ここに統合報告書2023をお届けします。ご一読のうえ、ご意見をお寄せいただければ幸いです。