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vol.06 - オークマ株式会社

オークマ(OKUMA)は、工作機械のリーディングカンパニーとして、高精度・高剛性の旋盤・マシニングセンタ・複合加工機から独自の装置(OSP)まで、幅広い製品をお届けしています。

モノづくりの未来を切り開いてきた男達が、今を語らう。

モノづくりの未来を切り開いてきた男達が、今を語らう。

オークマ株式会社 代表取締役社長

家城 惇

2012年6月

取締役技術本部長

2015年7月

常務取締役技術本部長 兼 FAシステム本部、資材部担当

2017年7月

専務取締役FAシステム本部長 兼 品質保証本部、社外生産部、
  品質技術センター、大同大隈股份有限公司担当 兼 技術本部管掌

2018年7月

取締役副社長サービス本部、品質保証本部、社外生産部、
  大同大隈股份有限公司担当 兼 製造本部、技術本部管掌

2019年6月

代表取締役社長就任(現任)

2022年11月時点

株式会社東京精密 代表取締役社長CEO

吉田 均

1983年

明治大学工学部電子通信工学科 卒業

1983年

(株)東京精密 入社

2015年

代表取締役CEO就任(現任)

2016年

NDマーケティング大賞受賞

2020年

日本精密測定機器工業会会長 就任(現任)

※2022年11月時点

家城社長について

家城社長について

吉田

まずは社長の若いころのお話を聞きたいと思うのですが、ずっと研究・開発の分野に携わっていらしたのですか?

家城

入社当時は、技術開発部門で位置計測の研究開発をしていました。当社は1963年にNC装置を開発していますが、当時、開発するなら絶対位置検出が必須と考え、当社は機械メーカでしたが独力で、絶対位置をギア結合のメカニズムで実現した機械屋らしい検出器を開発し、絶対位置検出方式のNC装置を開発した歴史があります。私が入社した時にはリニアの絶対位置検出の精密計測を開発しているところだったのですが、世間からは「絶対位置検出で0.01μm分解能計測なんてリニアの計測にはいらない」と言われましたね。しかし絶対位置検出はやがて一般的なものとなります。世の中でなんと言われても、モノづくりの現場を熟知した立場で、つくらなければならないと考えたものは創る。当時からそういう社風だったと思います。
ただ、その当時は、研究はしてもお客さまが活用する技術への昇華は不十分という感じでしたので、私が課長になるときに研究開発部の中に要素開発課を創設しました。「サーモフレンドリーコンセプト」なども、開発者が長年をかけて進めてきた熱変位の基礎研究を、ユーザーメリットへと昇華させ、展開させていってくれたのがこの時期以降です。

吉田

我々測定機をつくる者にとっても、温度変化への対応は永遠のテーマです。加工精度の向上に伴い、測定機はそれ以上に精度を上げなければなりませんから。
では、今までで一番苦労されたことと言えばなにを思い浮かべますか?

家城

かつては、オイルショックやバブル崩壊など、10年に1度くらいで業界は大きなダメージを受けてきました。そういう厳しい状況になると、最初に削られるのが研究開発予算だったりします。でも、それではいけないと。若手研究者ながらも、研究が不要不急なものと思われてはいけない、尖がった開発をしていこうと、仲間たちと踏ん張ったことを思い出します。

吉田

そうですね、ずっと不景気が続くわけではないですから、苦しい時にも開発を続けて、次の芽を育てておくことが大事になってきますよね。
そういう状況下でも、御社は要素技術開発をモノづくりに取り入れながら、ずっと業界をリードされています。仕事をする上で最も大切にしてきたものはなんですか?

家城

「知る者は好む者に如かず 好む者は楽しむ者に如かず」という言葉がありますが、夢中で楽しんで仕事をする人は、10年経つと状況を変えてくれます。やりがいを持って仕事をすることで、その人が成長し喜びを感じてくれると嬉しいですね。これは企業間の共創でも同じです。本当はもう少しドライになる必要があるかもしれませんが、新しい付加価値を創造するには、やりがいと成長が大切と思います。

吉田

御社のホームページにある『マイスターの技と魂』の頁を見ると、今の社長の言葉に頷けます。従業員のひとりひとりがプライドを持って仕事に取り組み、その思いを会社も大事にしている。それがよく伝わってきました。
社長は、東北大で博士を取られていますね?

家城

若手研究者だった頃、研究開発で社内外での勝負がしたくて、精密工学会や国際会議で春と秋に学術講演の発表等をしていました。学術論文をまとめて精密工学会賞をいただいたりもしました。その経験からも、今の若い人たちがもっと好きなように研究できる環境づくりをしていきたいと考えています。

「OPEN POSSIBILITY」

吉田

御社のブランドメッセージである「OPEN POSSIBILITIES」についても伺えますか?

家城

当社は創業から125年、時代の変化に応じて、生産加工の新たな領域を切り拓いてきました。これまでの歴史を振り返ると繁栄を築いてきた工作機械メーカが入れ替わっていますが、その中でも当社が変わらず残ってこられたのは、常に新領域を切り拓いてきた、変化し続けてきたからと思います。現状維持は衰退になりかねません。
これからは持続可能な社会への貢献が重要となります。世界の製造業においても、労働人口・熟年作業者の減少、脱炭素化対応などが大きな問題になっています。お客様は、それぞれの社会課題の解決に関心をお持ちと思います。これからは単に高性能な工作機械を提供するだけでなく、お客様の生産加工における課題を抽出し、解決することが我々の仕事になってくる。まさに「OPEN POSSIBILITIES」。世界のお客様のため新たな可能性に挑戦していくという精神が、非常に大事になると思います。

吉田

それがモノづくりのベースですよね。世の中を住みやすくするために我々の技術をどう活かすか、その思いで当社も取り組んでいます。
持続可能な社会という点で言うと、脱炭素に関して力を入れていることはありますか?

家城

当社は今年の10月1日から、国内3工場でスコープ1、スコープ2のカーボンニュートラル化を実践しました。カーボンニュートラルの工場から出荷され、高精度であり、かつ省エネ性能の高い機械、つまりお客様の脱炭素化に貢献できる機械を”Green-Smart Machine”と自己宣言して、エンブレムをつけて出荷することになりました。
この1年間、当社は「高精度と省エネを両立するマシン」をお届けすることをアピールした販売戦略を立ててきました。例えば、高性能でも精度安定化をさせるために、機械を冷却して、多くのエネルギーを使うようでは、脱炭素化に逆行します。当社が考える「高精度と省エネの両立」には多くのお客様に共感していただけていると感じています。
お客さまも自社工場のカーボンニュートラルを推進するにあたって、CO²排出量の引き下げは必須です。そのための取組みが、”Green-Smart Machine”の提供であり、この想いを生産加工の業界で共有し、脱炭素の取り組みを広めていきたいと考えています。

吉田

今時点でのCO²削減量の目標値など、具体的に決まっていますか?

家城

はい、定めて取組みを進めています。生産加工現場のCO²排出量は、ほぼ空調と機械稼働による電力の消費がベースとなっています。弊社の”Green-Smart Machine”は、恒温室のような空調を必要とせず、寸法精度の安定した精密な加工が出来ます。高精度と省エネ性能の両立 という価値を着実にお客様にご提供していきます。

東京精密との関りについて

東京精密との関りについて

吉田

東京精密との関係についてもお話を伺いたいと思います。社長の目には、当社はどのように映っていますか?

家城

全ては測らなければものは作れませんので貴社は非常に重要な役割を担われています。工作機械は、精密な部品を加工する機械であり、母性原理が働くため高精度が要求されます。
また、自動化・無人化の生産システムの中で精度を担保するには、3Dデータとの迅速な照合やそれを生産加工にどうフィードバックするかなどが重要になってきます。一般工場環境で高精度を保ちつつ、そうした機能レベルを高めていただければと思います。

吉田

我々も、そこは今後の大事な取り組みのひとつだと思っています。測定機は、昔は環境の整った検査室で、時間よりも正確性が重要視されましたが、今は現場で素早く正しい答えを出すことを求められます。ですので、発展、成長の方向性は社長の考えと同じです。

家城

東京精密に関して言えば、三次元粗さ計測機や形状測定機の特別仕様を納入していただいたときに、厳しい要求精度を満足させるための対応をしっかりと検討いただきました。サービス面での対応においても大変よくやってくださり、御社のモノづくりに取り組む姿勢や価値観に共感しております。

吉田

ありがとうございます。もちろん製品の品質は大事なのですが、導入してからのきめ細やかなサービスで、お客さまに満足をいただくのが重要だと考えています。当社はサービス部門にも力を入れておりますので、なんなりとおっしゃってください。すぐに対応させていただきます。

市場変化について

吉田

昨今の社会状況によって、部材の調達などに各社難儀しているというニュースがありますが、御社ではいかがですか?

家城

半導体関係もそうですが、鋳物や板金、あらゆる購入品の入手が困難な状況にありました。半導体では制御用のCPUやデバイスなど、まだまだ不確実な入手状況が続くと想定しています。
工作機械においては、協力会社の方々としっかり連携して取組んでいくことが、より重要になってくるでしょう。
こうした調達品の入手に関しては、在庫のあり方や管理、BCPを考慮し調達品の産地を分散させるなど、今まで脆弱だった部分を考え直すきっかけになったと思います。2023年もまだまだ課題が続くでしょうね。御社はいかがですか?

吉田

世の中のなにからなにまで半導体が使われていますから、供給より需要の方が伸びてしまっているのも問題だと感じています。需要に追いつくのには、もう少しかかるでしょうね。一方で自動車など、世の中はEV化に大きくシフトしていますね。その影響などは感じますか?

家城

工作機械業界としては対象部品の変化による影響を受けると思います。ただ我々がもともと対象としていた部品は、足回り部品や、ボディなどのプレス金型、アルミホイールなどでしたので、比較的影響が少ないと思います。
逆にEVになって、EV部品の形状や生産量から、加工を柔軟性のある汎用工作機械に置き換える流れがありまして、我々が提供できる領域が拡がっています。工程集約するとスループットが上がりますので、高精度な5軸制御マシニングセンタ等々を我々が提供するという新しい需要が出ています。今は自動車等の電動化という新しい成長領域を、いかにして我々が支援できるのかということに全力を尽くしているところです。
また、航空機や宇宙関連についても、エンジンや足回り系が多く、新たな投資の拡がりが見えているところです。

吉田

なるほど。そういう意味では、御社はEV化の流れの影響を、負ではなくプラスにとらえながら、御社の特徴を出していこうとしているのですね。そして今後ますます半導体業界、航空機業界への成長戦略を描いているということですね。

今後の生産への取り組み

今後の生産への取り組み

吉田

最後になりますが、今後のモノづくりについてなにかありますか?

家城

お客様への提供価値を高めることが一層大切になってきます。これからのモノづくりにおいては、お客様の生産加工における課題意識を十分理解したうえで、その解決策をご提案することが最優先となっていきます。従って社員の課題解決能力が、会社の価値となってきます。社員のやりがいと成長をどう引き出していくか。
渋沢栄一さんの言葉に『順理則裕』というものがあります。理(ことわり)に従う、成すべきことをしていけば、則ち裕(ゆたか)なり。社会課題の解決に貢献し、安心して暮らせる社会を実現する。そうすると、結果として我々企業の発展や利益になる。
世界の製造業、我々のお客様は社会課題解決に取り組まれています。そうした中で、我々がこうしたお客様の需要にどれだけ応えられるか、が受注となり売上となってくる。そしてお客様の生産加工における課題を解決することでお客様の利益を生み、その成果の積み重ねが当社の利益になってくる。まさに『順理則裕』という渋沢さんの言葉のとおりです。お客様への提供価値を高めること、そのうえで社員のやりがいと成長を両立させていきたい、そう考えています。

オークマ株式会社

オークマ(OKUMA)は、工作機械のリーディングカンパニーとして、高精度・高剛性の旋盤・マシニングセンタ・複合加工機から独自の装置(OSP)まで、幅広い製品をお届けしています。

2022年11月時点の記事です。

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